つみたてNISAコラム
つみたてNISAはいつ始めればいいの? 株価史上最高値での投資開始の是非
つみたてNISA(積立NISA)がスタートしましたが、日本証券業協会の集計によると、昨年末時点での申込件数は20万件程度と静かな始まりになったということでした。2014年のNISA(ニーサ、少額投資非課税制度)スタート時には約320万件の申し込みがあったことと比較して、その不人気ぶりを危惧する向きもあります。ただ、つみたてNISAは、これから資産形成を始める人のための制度です。投資の経験のない方は、「元本が保証されていない」ことに抵抗があります。まして、米国株価が「史上最高値」を更新し続けているような「上がり切った」かに感じられる現在、「いつ下がり始めるかわからない」と、スタートをためらう気持ちは分かります。つみたてNISAは、いつ始めれば良いのでしょう?
上がった株価は下がる、世界株価が値上がりした今は投資のタイミング?
かつて、現在のように株価が大きく値上がりした時期に、2000年のITバブル崩壊の景気減速からたち直る2003年後半からの景気回復期があります。当時はアメリカ経済が「ブッシュ減税」などによって力強く成長し、それがけん引する形で世界の景気が回復しました。特に、中国は10%近い成長力で新興国経済を引っ張り、「BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)」への注目度が一気に高まりました。
この時期、世界の株価も大きく値上がりしました。MSCI ACWI(オールカントリーワールドインデックス)という日本を含む先進国に新興国を合わせた世界の株価指数(円ベース)は、2003年9月を100とすると、2006年1月に150超え、2007年10月に200超えと4年間で2倍になりました。現在もちょうど、4年前に比べてMSCI ACWIが2倍超になったくらいに上昇したところです。

出所:モーニングスター作成(2003年9月=100)
きっと、2007年9月ごろには、多くの投資家の方々が、「株価がずいぶん高くなった」と感じていたことでしょう。ただ、世界景気は上向きで企業収益も好調ですから、「これからもっと上がるだろう」と感じていた人も少なくなかったと思います。
そして、2007年の年末ごろからアメリカで「サブプライム住宅ローン」の不良債権化が話題となり、2008年9月には米国の大手投資銀行であるリーマン・ブラザーズが倒産するという「リーマンショック」が起こって、世界の株価は急落しました。2007年後半に株式投資を開始した人は、真っ青になってしまったことと思われます。
積立投資は株価の値上がり時にスタートし、「10年継続」がポイント
しかし、積立投資をしていた人は、その後、投資を継続していれば、大きく報われました。下記は、MSCI ACWIに10年間毎月定額で投資をし続けた場合の10年間の年利回りの平均値を示しています。2007年9月に投資を開始した人は、年平均利回り6.8%程度の非常に高い投資収益を上げることができました。1年前の2006年9月にスタートするより、よほど良いパフォーマンスを得ています。

出所:モーニングスター作成
積立投資スタート時の株価の水準だけを考えれば、2006年9月よりも2007年9月は20%ほど株価が値上がりしています。積立投資のスタートに株価の水準が高い安いは、あまり関係ありません。むしろ、スタート後に、どれほど株価が下落し、その下落後に株価がどこまで戻るかということが大事です。
リーマンショック後の10年間では、株価は全値戻しを達成し、さらに最高値更新へと値上がりしています。まさに、理想的に「下げて・上がる」という値動きになりました。
出所:モーニングスター作成(2003年9月=100)
積立投資の性格を考えると、始めるタイミングは、「株価が高ければ高いほど良い」といえるかもしれません。ポイントは、その後の株価下落局面で、しっかりと積立を継続することです。「どこまで下がるのか」「いつ上昇するのか」ということには予め答えることはできません。ただ、戦後60年を振り返ると、10年くらいのサイクルで株価の上げ下げがあります。積立投資を始めたら、10年は継続しましょう。その覚悟さえ、しっかりとしていれば、積立投資のスタートのタイミングを測る必要はありません。準備ができ次第、すぐに始めましょう。
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