つみたてNISAニュース
つみたてNISAで初めての投資を応援する「野村スリーゼロ先進国株式投信」 野村證券に信託報酬ゼロ投信の狙いを聞く

野村證券
商品企画部長 福田和之氏
――インデックス投信には、信託報酬の引き下げ競争がありますが、「信託報酬ゼロ」は、新しい次元の手数料と言えると思います。この商品を企画した狙いは?
証券人口を増やしたいという思いに尽きます。昨年話題になった「年金2,000万円問題」などによって、資産形成についての関心が高まっていることは感じられるのですが、それが実際の行動にまで結びついているとは言えないと思います。「貯蓄から投資へ」という言葉は、既に30年以上にわたって使い続けられてきましたが、実際に投資をされている方は、30年前と比較してもほとんど増えていないのが実態です。
つみたてNISAも18年1月に導入されましたが、思うように伸びてはいません。ここには、私どものような証券会社の努力不足もあると考えました。日本証券業協会や私どもが行ったアンケート等によると、投資を始められない理由に、「難しそうだ」、「損をするのは嫌だ」などと一緒に「手数料がわかりにくい」ということもあります。これまで、できるだけ分かりやすく伝えてきたつもりですが、実際には伝わっていないということです。そこで、分かりやすくインパクトにあるカタチで伝えたいと考え、一切の手数料をいただかない「野村スリーゼロ先進国株式投信」の取扱いを決めました。
この商品は、つみたてNISAを資産形成のきっかけとしていただきたいという願いを込めた"応援商品"と考えています。投資の経験がない方、また、若い方々で資産形成を始めようと思い立った方々が、「手数料がかからないならやってみよう」と始めやすいと思います。この商品がきっかけとなって、つみたてNISAを始められる方が増え、証券投資人口の拡大につなげたいと思っています。
――投信の販売時手数料無料化がネット証券の間で進みましたが、対面証券として全国に支店網を持つ野村證券が「信託報酬ゼロ」に踏み込まれたのは驚きました。これは、ネット証券の動きを意識したものですか?
ネット証券の販売手数料無料化の動きより、ずっと早くからこの商品の構想はありました。投信の信託報酬は、販売会社と運用会社、そして、信託銀行の3社で分け合います。商品を設定・運用する野村アセットマネジメント、資産を実際に預かる野村信託銀行の理解を得て商品企画しました。3社の合意は早々にまとまったのですが、実際の取り扱い開始までには1年くらいの準備期間を必要としました。この準備は、公式ホームページの導線の改善など、主にオンラインのサービス拡充です。
19年4月にグループを横断する組織として「未来共創カンパニー」という組織を作りました。ここでは、オンラインサービスの強化をテーマに、野村グループ各社のみならず、IT大手など他業種からも参加していただいて、これまで対面コンサルティングで培ってきた野村證券のノウハウをオンラインサービスに活かすための様々なアイデアを形にしていこうとしています。
たとえば、証券会社では「成り行き」「指値」「特定口座」などといった言葉を普通に使っていますが、証券取引をしたことがない方にとって「特定口座」といわれても何のことかわかりません。そこで、お申し込み画面の中で、証券取引に関係する納税手続きを野村證券に任せますか、あるいは、ご自身で納税申告をしますかという質問を設け、その回答によって口座を特定するなど、初めての方にも分かりやすい手続き画面にしました。手続きで言葉がわからないために離脱する人は意外と多いのです。すべての言葉を一般にも分かりやすい表現に変え、口座開設時のつまずきを極力なくすように努めています。
「野村スリーゼロ先進国株式投信」は、つみたてNISA専用の商品としてネットでのみ取扱います。口座開設から、注文の受付、そして、運用報告書等の案内等も全てネットで完結するサービスになっています。この商品の取り扱いによってオンライン取引においても野村證券の存在感が一段とアップすることもめざしています。
これまでオンラインチャネルの実績は、いわゆるネット専業証券に一歩先を越された部分があります。ただ、今回の商品をきっかけに、改めて野村證券を意識していただいた方からは、「手数料が高いと思っていたが、よくよく調べてみると、信用取引の金利が安いなど手数料が安く済むところが少なくない」というご意見もいただきました。対面取引だけでなく、オンライン取引でも野村が一番良いと思っていただけるよう、オンラインチャネルの充実は一段と力を入れていきます。
――信託報酬ゼロの商品は、シリーズ化しないのですか?
シリーズ化の計画はありません。「野村スリーゼロ先進国株式投信」は、日本を除く先進国株式指数であるMSCI-KOKUSAI指数に連動することをめざすインデックスファンドです。新商品を加えた野村のつみたてNISA専用ファンドは、日経平均株価に連動する「野村つみたて日本株投信」、先進国と新興国を含む全世界株式指数であるMSCI ACWI Indexに連動する「野村つみたて外国株投信」、内外の株式・債券・リートに投資する「野村6資産均等バランス」「つみたて8資産均等バランス」という5本のインデックスファンドと、アクティブファンドである「ひふみプラス」「コモンズ30ファンド」を加えた7本のラインナップになります。
つみたてNISAは、制度として株式に投資する投信の長期積立を促しています。私どもとしても、長期の資産形成には、外国株式に投資することが望ましいと考えています。つみたてNISAのラインナップの中で、特に手数料がゼロで目立った存在となる商品が外国株式に分散投資するインデックスファンドであるということは、ぜひ、このファンドから投資をスタートしていただきたいというメッセージでもあります。
また、信託報酬ゼロの期間は設定から30年12月31日までとし、31年1月1日以降は0.11%(税抜き0.10%)以内にします。
――これからの展開は?
「野村スリーゼロ先進国株式投信」をきっかけに、つみたてNISAの制度紹介と利用促進に努めていきたいと思っています。たとえば、「職場つみたてNISA」は、人手不足が深刻化する中で、従業員の福利厚生制度充実の一環として採用企業が順調に伸びています。信託報酬ゼロの商品追加で、より強い関心を持っていただいています。
また、18年1月に「人生100年パートナー」宣言をし、100年にわたってお付き合いいただけるサービスラインアップの拡充に努めてきました。つみたてNISAは資産形成のための制度ですが、たとえば、「おもいつなげる」は、資産の相続を意識する方々向けのサービスです。暦年課税制度を利用した生前贈与の非課税枠(年110万円)を、贈与を受けるお子様やお孫様は資金を投信積立で運用していきます。
そして、毎月の購入手数料を実質ゼロにする「投信積立キャッシュバックキャンペーン」も行っています。こちらの対象商品は、キャピタルやティー・ロウ・プライス、アムンディ、モルガン・スタンレーなど名だたる世界の運用会社の運用力を最大限に発揮したアクティブ運用ファンドを用意しました。しっかりと運用実績を示すデータも提供できる選りすぐりのファンドばかりをラインナップしています。「野村スリーゼロ先進国株式投信」で投資をスタートした方が、次のステップとして、つみたてNISA以外で積立を考えられる際にも、インデックスファンドとは異なる魅力のあるアクティブファンドをご検討に加えていただきたいと思います。
米国では確定拠出年金で3,000万円を超えるような資産を残して悠々自適の老後生活を送っている方々が多くいます。2,000万円不足するといわれる日本とは大きな違いです。高齢長寿社会の日本を豊かにする意味でも、家計の資産を証券投資に振り向けていくことは、証券会社に課せられた使命だと感じています。つみたてNISAの仕組みや積立投資の効用を地道に伝え続けていきたいと考えています。
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