つみたてNISAコラム

つみたてNISAが1年間で100万口座のペースで浸透、投信業界に変革を促す契機に

 つみたてNISAが2018年1月にスタートして1年が経過する。9月末までの口座数は、87.5万口座を超え、1年間で100万口座を達成する勢いだ。1年前に加入対象者範囲の拡大を実施した「iDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)」が、30万口座を発射台として100万口座をクリアするまで1年8カ月を要した(100万口座純増には2年間をかけても到達できず)ことと比較すると、身近な資産形成口座として受け入れられたといえる。

 つみたてNISAは、NISA(少額投資非課税制度)のバリエーションのひとつとしてスタートした制度だが、その中身には「日本の資産形成の考え方を大きく変えるきっかけにしたい」という金融庁の強い意志が働いている。すでに1000万口座を超えたNISAは、年間120万円までの投資資金について投資収益にかかる20%の税が5年間は非課税になる制度だが、「つみたてNISA」は、「つみたて」に限り、「年間40万円」まで、「20年間」にわたって非課税になる。

ノーロード、低コストの株式型インデックス投信を積み立てる

 「つみたて」に限るというように、投資行動を縛るとともに、つみたてNISAで購入できる商品について、金融庁が条件を細かく規定して採用の可否を判断するようにしている。「ノーロード(購入時手数料無料)」「低コスト(国内型インデックス投信は信託報酬年0.5%以下など)」など、基準を満たす商品は2018年12月26日現在、162本(インデックス型が142本、アクティブ型17本、ETF3本)に過ぎない。このように、「つみたてNISA」に関しては、「何を、どう買うのか?」という投資行動の重要なポイントを金融庁が規定し、金融庁が手取り足取り「望ましい投資行動へ」と導いているようにみえる。

 意図された投資パターンは、「長期・分散・積立」で「株式」に投資すること。「長期」とは20年、すなわち、20代、30代という「若いうちからの投資」を勧奨。「分散」は低コスト、かつ、広範囲な株式に分散投資ができる「インデックス型投資」をメインの投資手段に位置付けている。そして、毎月一定額を投資し続ける積立投資だ。

 実際に「つみたてNISA」の口座を通じて行われている投資は、金融庁の意図に沿った内容に近い。9月末の総口座数87.5万人に占める20歳代と30歳代の比率は合計39%を占める。40歳代まで加えるとその比率は65%に高まる。これは、一般NISA(1138.86万口座)に占める40歳までの比率29.8%と比較すると違いが明らかだ。一般NISAは50歳代以上の世代で70.2%を占める高齢者向けの口座だが、つみたてNISAは40歳代までの若い世代が主として利用する口座になっている。

つみたてNISA口座の状況:2018年3月末~9月末

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出所:モーニングスター作成


 また、つみたてNISAで実際に購入されている商品も、9月末時点で総買付額約576億円のうち67%はインデックス投信になっている。つみたてNISAの導入によって、20歳代~40歳代という若い世代が、株式インデックス投信による積立投資をスタートしたというのが実態だ。

 金融庁がなぜ、このような「長期・分散・積立」投資を国民に勧奨しているのか? これは、一言でいえば、日本国民に「豊かになってほしい」という一念からだ。過去20年間(1995年から2016年まで)で、米国の家計資産は3.3倍、英国で2.5倍に拡大しているが、日本は1.5倍になったに過ぎない。これは、日本の家計の金融資産が預貯金が中心のところ、米英ではより積極的に株式や投資信託を保有していることの差が現れたためだ。1990年の初頭には、米国よりも豊かであった日本の家計は、この20年間で逆転され、貧しくなってしまった。

 金融庁では、この家計の豊かさの逆転の理由を、金融政策の差に求めた。米国では、1990年代から401k(確定拠出年金)やIRA(個人退職口座)などを通じた、株式や投資信託といったリスク性資産への投資が進んだ結果、その運用益の積み上がりによって家計資産が大きく膨らんだと分析。日本は、家計の資産が主にゼロ%金利の預貯金で眠っていた結果、ほとんど資産が増えることがなかったとみている。実際に、1995年から2016年まで米国の家計資産が3.3倍になったうち、運用リターンによる積み上がり分は2.5倍を占める。日本の家計では運用で1.2倍にしか増えていないこととは対照的だ。

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 したがって、金融庁は投資非課税口座「NISA」を創設し、「ジュニアNISA」「つみたてNISA」へと利用範囲を拡充。そして、個人型確定拠出年金「iDeCo」については、加入対象者を広く国民一般に広げて利用を促すようにした。「貯蓄から資産形成へ」の呼びかけを、制度面で後押ししようと躍起だ。さらに、金融機関への監督の面でも、「フィデューシャリー・デューティー(顧客本位の業務運営)」の徹底を呼びかけ、手数料収入の拡大を優先した投資商品の提供から、利用者が収益を積み上げられる商品の提供姿勢への転換を促している。

つみたてNISAが「投信で資産形成」の考えを広める

 つみたてNISAによって、投信業界そのものも大きく変化しつつある。つみたてNISAに採用された投資信託の信託報酬は国内インデックス投信の平均で年0.27%、投資先を内外・海外とするインデックス投信は平均で年0.34%だ。「金融庁のお墨付き」と目される商品群の信託報酬が年0.30%前後という低い水準に抑えられ、アクティブ投信でも国内型は年1.0%以下、海外資産に投資するものは年1.5%以下にするという基準が設けられた。そして、「毎月分配型」は認めないという方針も明確化。これによって、低コスト・インデックス投信の隆盛と、毎月分配型投信からの資金流出が進んだ。

 このように「つみたてNISA」をきっかけに、「投信による資産形成」の考え方のベースができ、資産形成に資する商品という視点での商品供給が強化された。つみたてNISAのスタートは、投信業界の体質を変えるきっかけになった出来事として、後々まで記憶されるような出来事になるかもしれない。

 一方、「つみたてNISA」は、2037年までの時限措置であるため、2018年に投資を開始した人は20年間のつみたて期間が確保できるものの、2019年以降は、つみたて期間が1年ずつ縮減し、長期の積立投資を奨励するという制度とは異なる実態になっていく。金融庁は、「制度の恒久化」を求めているものの、税制改革大綱では「総合的に検討する」という表現にとどまっている。制度が恒久化するかどうかは、制度の普及、ひいては、「貯蓄から資産形成へ」の実現にもかかわってくることなので、今後の議論が待たれる。

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