つみたてNISAコラム

30%を占める老後貧困予備軍から抜け出す! つみたてNISAで始める貯蓄習慣の効用

 預貯金も投資信託も持っていない「金融資産ゼロ世帯」が増えています。金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査」(2人以上世帯調査)によると、2017年の「金融資産ゼロ世帯」比率は31%です。このまま貯蓄ゼロで退職年齢を迎えてしまうと、退職後の生活が非常に厳しくなってしまいます。「貯蓄は習慣」といわれます。決まった額を貯蓄する習慣ができれば、月日の経過とともに数十万円、数百万円の金融資産が積み上がります。今年から始まった「つみたてNISA」の制度も、「貯蓄の習慣化」が第一義です。「迷う前に、始める」――貯蓄の意義について、改めて考えてみましょう。

昭和時代の貯蓄ゼロ世帯は10%以下

 貯蓄ゼロ世帯の比率が高まったのは2000年以降です。昭和の時代(1989年まで)には1ケタ比率が当たり前だった「ゼロ世帯」(預貯金、信託、保険、有価証券等の保有がゼロ。給与振込等で一時的に口座にとどまっている預貯金等は除く)ですが、1993年に10.5%と10%台に乗せました。そして、2003年に21.8%と20%台に乗せ、その後は年を重ねるごとに比率が高まり、2013年以降は30%以上で定着しています。

 この貯蓄ゼロを世帯の手取り年収別でみると、300万円未満の世帯で41%になります。手取り300万円未満の世帯は全体の19.1%。次の階層の300万円~500万円未満(ゼロ比率30%)が29%で最も多くの世帯が該当します。500万未満で合計48.1%と、ほぼ半分の世帯が含まれます。これらの世帯の30~40%で貯蓄がゼロというのは、深刻な事態になっているように思えます。現在の高齢退職世帯は公的年金だけでは生活が成り立たず、貯蓄を取り崩して生活しています。一段と年金支給額が圧縮される将来は、なおのこと貯蓄で生活を支える重要性が高いと考えられるからです。

 しかも、ゼロ貯蓄世帯が急拡大したのは、ここ10年間くらいのことです。2012年12月にスタートしたアベノミクスによって、日本の景気は回復したとされますが、ゼロ貯蓄世帯は2013年以降に激増し、傾向的に低所得世帯から徐々に所得が上の世帯へと「ゼロ貯蓄」が広がっていっています。

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高年収層にも広がる貯蓄ゼロ、貯蓄の習慣化が重要

 ここで注目したいのは、手取り年収が1,000万円以上の世帯でも15%が貯蓄ゼロだということです。昭和時代には、バブルに浮かれて散財していた時代ですら、年収1,000万円を超える高所得層に貯蓄がゼロということはありませんでした。それが今では、7世帯に1世帯は貯蓄ゼロですし、その比率は高まりつつあります。

 十分な収入があるのもかかわらず、貯蓄がゼロなのは、貯蓄する習慣が身についていないからでしょう。手元にあるお金をすべて使って生活をしているから、お金が残らないのです。貯蓄は習慣です。毎月の収入が決まっている人は、収入から一定金額を貯蓄に回して、残ったお金で生活しましょう。貯蓄額は、無理のない範囲でかまいません。毎月の収支を都度考えて、今月は1万円、翌月は5,000円などと貯蓄の額を変えるのではなく、一定の金額で貯蓄します。1万円が難しければ、5,000円でも、あるいは、1,000円でも始めましょう。大事なことは始めることです。

 そして、それを続けましょう。毎月一定の金額を貯蓄していくことが、積み立てです。毎月1万円で積み立てを始めた人は、半年で6万円。毎月5,000円の人は1年間で6万円が貯まっています。この貯蓄する口座は、入金だけに限定します。給与振込等のある普段使いの口座とは別にして、給与振込日に自動的に資金が引き去られるようにセットしておくと便利です。5年経つと、毎月1万円の積み立てた場合は60万円、5,000円だと30万円が貯まります。

昭和時代は預金による貯蓄を奨励、今は「投資」

 貯蓄の習慣を始める時に、「つみたてNISA」について考えてみましょう。なぜ「NISA」(少額投資非課税制度)で積み立てなのでしょう? 

 戦後の日本には、ハイパーインフレ時に「救国貯蓄運動」(昭和24年・1949年まで)というものがあり、昭和27年4月には貯蓄増強中央委員会が結成され、都道府県の貯蓄推進委員会と相互に緊密な連絡を保ち、全国統一された歩調で貯蓄奨励運動を展開していました。「こども銀行」と称して、地域の金融機関が毎月小学校を訪問し、子どもたちの小遣いを預かるとともに、小学校において金融の仕組みを教え、子どもの頃から貯蓄の習慣を身につけさせるという活動も展開されていました。当時の大蔵省(現在の金融庁)と文部省(現在の文部科学省)の共同企画です。積極的な学校は表彰もされていました。ここで奨励されていたのは、貯蓄です。昭和時代の奨励策は銀行預金だったのです。

 現在は、NISAによる株式・投資信託等の配当・譲渡益等を非課税とした投資優遇税制の活用を促しています。新たに創設した「つみたてNISA」では収益非課税の対象商品を投資信託に限定しています。つまり、金融庁は「『投資信託』を積極的に使って蓄財してください(資産形成してください)」と呼びかけているのです。

 なぜ、投資信託なのでしょう? 金融庁は、米国と日本の家計金融資産の「成長の差」に注目しています。1995年から2016年までに、米国の家計金融資産は3.3倍に伸びましたが、日本は同じ期間に1.5倍止まりです。その差は、運用リターンによって米国は2.5倍になったことに対し、日本は運用リターンでは1.2倍にしか増えなかった差が大きかったと分析できます。この運用リターンの差は、米国の家計の金融資産の46%を株式や投資信託で占めますが(個人年金等を通じた間接保有を含む、2016年末)、日本は19%と米国の半分以下の水準にあることが理由です。

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 日米の差は、貯蓄残高の差だけではありません。米国では勤労所得と財産所得が7対3の比率ですが、日本では勤労所得が9を占めます。つまり、米国は株式や投資信託を多く保有することによって、所得の水準も高く豊かな生活ができ、かつ、財産の額もより大きく増えているのです。
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米国家計に投資信託を広めたきっかけは確定拠出年金の創設

 米国の家計の金融資産に株式や投資信託の比率が増えたのは1990年代からです。それまでは、預金が中心で、現在の日本の家計の金融資産の構成と大きくは違いませんでした。1981年に始まった401(k)プラン(確定拠出年金)が90年代の株高時代に大きく成長した結果、株式や投資信託の比率が高まったといわれています。株価が上昇する中で、確定拠出年金の運用先として株式投資信託が注目され、年金で良好な運用成績が得られたために、一般の口座でも投資信託や株式への投資が活発に行われるようになったのです。

 日本で確定拠出年金が導入されたのは2001年。米国に遅れること20年です。不幸なことに、日本では確定拠出年金が導入されたのが「失われた20年」の中で、株価の低迷期に重なってしまいました。株価が値上がりしないため、確定拠出年金の運用先としても「元本確保型商品(預金や保険商品など)」が好んで利用される結果になっています。アベノミクス以降の株高を背景にした「NISAの導入」(2014年1月)、「ioDeCoの制度改革」(2017年1月から新制度スタート)と「つみたてNISAのスタート」(2018年1月)は、家計の金融資産改革のテコ入れ策ともいえます。

 特にiDeCoとつみたてNISAは、資金を積み立て、ゼロから資産を作る制度として設計されています。投資商品への販売手数料をなくし、運用に関わる手数料も極力低く抑えた商品を揃えている点でも共通しています。

 つみたてNISAが、株式に投資する投資信託を主とした品揃えにこだわったのには、長期の積立投資においては、株式インデックスへの投資が抜群の投資収益につながったというこれまでの経験則が背景にあります。

 金融庁では、有識者会議での議論を踏まえて、つみたてNISAに採用する投資信託について、その運用を左右するインデックスを特定し、かつ、制度に組み入れ可能な銘柄の条件を設けて対象銘柄の審査を行っています。つみたてNISAに採用されている商品は、長期の積み立てで資産形成するにふさわしい銘柄といえる商品群といえるでしょう。「とりあえず始めてみる」には、どれを選んでも大きな失敗のない商品群になっています。まずは、つみたてNISAを始めてみる。貯蓄がゼロの人は、まず一歩を踏み出すことが肝心です。

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