つみたてNISAコラム

つみたてNISAの商品選び、金融機関はなぜ「8資産均等」の投資信託を選ぶのか?

 つみたてNISA(ニーサ、少額投資非課税制度)のサービスが開始され3カ月が経過しようとしています。「貯蓄から資産形成へ」を掲げる金融庁が、資産形成のための手段として満を持して世の中に送り出した制度ですが、市場の反応は静かです。2月になって株式市場が崩れたことで、投資のリスクが意識されたせいかもしれません。投資にはリスクがあるからこそ、つみたてNISAで長期・積立・分散投資を行うことが推奨されています。つみたてNISAが実現する「長期・積立・分散投資」の実体について検証してみましょう。

つみたてNISAは対象商品を限定

 つみたてNISAの投資対象商品は限られています。一般のNISAであれば、株式も含め、金融機関が取り扱っている投資信託は、ほぼ全てが対象商品になっていますが、つみたてNISAの場合は、金融庁が基準を設け、その基準を満たした商品を取扱い可能商品としてリスティングしています。最新リスト(3月19日更新)で合計145銘柄(うち、ETFが3本)のみが、対象商品です。連動をめざす株式インデックスを指定し、信託報酬にも上限が設けられています。

 このように、そもそも商品選択の自由度が小さい制度ですから、つみたてNISAを取り扱う金融機関では、ネット証券など一部を除いて、非常に限定的な品揃えでサービスを提供しています。運用商品の品揃えが10本もあれば、多い方で、4本以下のところが少なくありません。大手金融機関でも、りそな銀行は4本、三井住友銀行は3本という商品数になっています。「つみたてNISAは、投資が初めての方向けの制度なので、『選ぶ』より『始める』ことの方が重要。投資が初めての人には、たくさんの選択肢があると選ぶのに困り、始めることをためらわせる要因になる」というのが、商品数を絞っている理由とされています。

目立つ「8資産均等型」のバランス型投資信託

 絞り込まれた商品の中で、目立って多いのが、「8資産均等型」のバランス型投資信託です。8資産とは、「国内株式」「先進国株式」「新興国株式」「国内債券」「先進国債券」「新興国債券」「国内リート」「海外リート」の8つの資産です。これらに各12.5%の割合で均等に投資します。世界の株式・債券・リート(不動産投信)にまんべんなく投資することで、分散投資効果が期待されます。

 さて、この「8資産均等型」の商品に投資すると、どのような投資成果が得られるのでしょうか? つみたてNISA対象商品の中で、もっとも運用期間が長い「eMAXISバランス(8資産均等型)」を使って、過去3年間の価格推移について調べたのが下記のグラフです。「国内株式(TOPIX)」「先進国株式(MSCIコクサイ)」「国内債券(モーニングスターインデックス国内債券・中長期債)」「先進国債券(モーニングスターインデックス国際債券・グローバル・除く日本)」と比較して、「eMAXISバランス(8資産均等型)」の価格推移の特徴が見て取れます。

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出所:モーニングスター作成


 2016年に株価が安い期間では、唯一値上がりした「国内債券」を除く資産の中では、もっとも下落リスクが小さい運用成績になっています。分散投資先に「国内債券」が入っている効果でしょう。そして、2017年に株価が値上がりした局面では、債券よりも高いパフォーマンスをあげることができました。過去3年間の年率リターンは1.71%です。好不調が対照的だった2016年と2017年の出来事を振り返ると以下の通りです。

 2016年は、年初に中国の経済指標悪化から上海株が急落して世界的な株安に波及。1月29日には日銀がマイナス金利を導入したものの、円高、原油安から株価は一段安で2月の月初に安値。6月23日にはBrexit(英国のEU離脱)の英国民投票の結果が出て、再び株価が急落。11月8日に米国大統領選挙の結果が判明し、トランプ氏が勝利したことをきっかけに年末は株高で年初の水準をわずかに抜け出したという1年間でした。

 2017年は、16年末のトランプラリーで上昇した高値での保ち合いが続いたものの、4月にはトランプ政権への期待が剥げ落ちるとともに、フランス大統領選挙などでの極右政党の人気化などを懸念して株価は下落。その後、フランスでのマクロン中道政権の成立、好調な企業業績を背景に株価は持ち直しました。8月~9月は北朝鮮がICBMの打ち上げ、水爆実験などを繰り返したため地政学リスクが意識されて株価は軟調になりました。10月は日経平均株価が史上最長の16連騰(2日~24日まで)を記録する急上昇で、年末まで株高が続きました。

リスクの大きさは「4資産」<「8資産」<「6資産」

 毎年、いろいろなことが起こって、その影響を受けて、株式が値上がりしたり、債券が値上がりしたりしていますが、これらの変動を全て取り入れて「中庸」の投資成績を狙うのが「分散投資」の効果です。そして、この「eMAXISバランス(8資産均等型)」に過去3年間毎月1万円を積立投資していたら、投資元本36万円に対し、投資資金の評価額は38.81万円になっています。2016年当時は株安で運用成績もマイナスですが、毎月少しずつ積み立てているため、マイナス期間中の資産の目減りは軽微なものになっています。

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出所:モーニングスター


 一方、つみたてNISA対象商品には、様々な資産分散商品があります。「均等投資」に限って、「2資産」「4資産」「5資産」「6資産」「8資産」の商品について過去のパフォーマンスを調べたのが以下の表です。ほとんどの商品が設定から1年未満の運用成績しかないのですが、短い期間でも傾向は出ています。「参考」に上げた8つの資産を対象としたETFのリターンと比較すると分かりやすいと思います。資産均等の中で、「債券」の組み入れ比率が高いほど、価格変動率が穏やかになっています。

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※「eMAXIS Slimバランス(8資産均等型)」の信託報酬率は4月11日~
出所:モーニングスター作成


 過去1カ月の株価下落時で、もっとも下落率が小さかった「4資産均等」のファンドは、「国内株式」「海外株式」「国内債券」「海外債券」の4資産に投資していますので、債券の投資比率は50%です。「6資産均等」では「国内株式」「海外株式」「国内債券」「海外債券」「国内リート」「海外リート」の6資産ですから、債券の投資比率は約33%、「8資産均等」の37.5%よりもやや少なくなっています。その分、「6資産均等」の方が、「8資産均等」よりも下落率が大きくなる傾向があります。価格変動の小さい順に並べると、「4資産均等」<「8資産均等」<「6資産均等」という並びです。

 過去3年のトータルリターンだけを見ていると、「海外株式」のパフォーマンスが一番良いという結果ですが、2016年、あるいは、2017年2月のように短期間に大きく下げるリスクがあるのも株式の特徴です。1~2カ月間で20%程度も価格がブレる株式には「怖さ」を感じる人も少なくないと思います。より穏やかな値動きで、世界の経済成長の果実が得えたいと考える時、「8資産均等」などのバランス型投資信託は、運用の良い選択肢といえるのではないでしょうか?

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