つみたてNISAコラム

つみたてNISAのスタート迫る、金融庁の金融行政方針が示す金融機関への期待

 金融庁は11月10日に「平成29事務年度 金融行政方針」を公表しました。金融庁が何をめざすかを明確にするとともに、どんな方針で行政を行っていくかについて明らかにするものです。11月16日に開催された金融審議会において、改めてそのポイントの解説が行われました。金融庁の目標は、「企業・経済の持続的成長と安定的な資産形成等による国民の厚生の増大」としています。来年1月にスタートする「つみたてNISA(ニーサ、少額投資非課税制度)」は、「安定的な資産形成等による国民の厚生の増大」を実現するための重要な手段に位置づけられています。

つみたてNISAは、国民の厚生の増大のため重要な制度

 金融庁が取り組む「国民の安定的な資産形成に資する金融・資本市場の整備」では、今年3月に公表した「顧客本位の業務運営(フィデューシャリー・デューティー)に関する原則」について、9月までに730以上の金融機関が受け入れを表明しました。原則の定着に向け、「長期的にリスク・手数料等に見合ったリターンを提供しているか」など、金融機関の取り組みを見える化するKPI(業績評価指標)等の公表を求めています。金融機関が多数の営業担当者を擁して需要を掘り起こす「プッシュ型」といわれる営業体制の下で顧客本位の業務運営が実現可能かについて分析・検証中としています。

 そして、1月にスタートする「つみたてNISA」を通じて長期・積立・分散投資の推進をはかります。すでに金融庁で職場つみたてNISAを導入することに決定しました。職場つみたてNISA導入と連携した投資教育等の実践ノウハウを、他の官公庁や民間企業へと横展開を計画しています。また、つみたてNISAの普及などのため、新たな情報発信チャネルの活用として、個人ブロガー等との意見交換やネットメディアへの情報発信にも努めていく予定だということです。

 また、退職世代等が家計金融資産の6割を保有していることから、退職世代等に対する金融サービスのあり方の検討も進めるといいます。金融資産の運用・取り崩しをどのように行い、幸せな老後につなげていくのか。そこに金融業はどのような貢献ができるのか等を検討していきます。

包括的、かつ、将来の変化も見据えて金融上の課題を検証

 金融上の課題については、「全体像について包括的、かつ、将来の変化も見据えて検証する」としています。そこで示しているのが下図です。左側の資金フローが現在の状況を示していますが、アセットオーナー(企業年金など)や家計から、資本市場(アセットマネージャー)への資金の流れ(=投資)が細く、反対に「貯蓄」として銀行に太い流れが向かっています。そして、銀行は、企業に融資を出すより、日銀預け金や国債により多くの資金を流しているという構造です。


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 これに対し、これからめざす姿は、アセットオーナーや家計から資本市場に流す資金の量をより多くし、資本市場は、スチュワードシップ・コード(責任ある機関投資家の諸原則)に則って正しい価値判断で企業に投資し、その結果として企業収益向上の果実を、投資(設備投資や新規事業投資など)、また、配当、賃金の向上などによって社会に還元します。家計から銀行へ、預貯金となって流れる資金は、今より細くなりますが、銀行は、事業性を評価して企業に融資する姿勢を強めて企業に対する融資量は拡大し、日銀預け金等に回っている資金の量が減少するという流れです。

 このような大きな資金の流れの変革を促す中で、家計の資金を資本市場に流すパイプを太くしようとする試みは、重要なポイントになっています。この資金の流れを促す潤滑油のようなツールが「長期・積立・分散投資」を実践する「つみたてNISA」や「iDeCo」です。金融庁では、「金融機関の中には、いずれ利ざやが立つだろう(金利が上昇し、預金と融資の間で十分な利ザヤが生まれる)という希望的な観測に頼った経営を行っている先」に対して、環境変化への対応について対話をしていくとしています。

 つみたてNISAについては、ノーロード(販売時手数料が無料)、かつ、対象商品の運用コストも極めて低い(販売を通じて得る事務代行手数料も低い)ため、単独のビジネスとしては収益化が難しいとされ、取扱いに消極的な金融機関もあるといわれます。反対に考えれば、消費者にとっては供給者が利益にならないとしり込みするほど「手数料が極めて低く抑えられた制度」といえます。

 これまで預貯金だけが貯蓄の手段だと考えていた人には、「投資する」ことへの抵抗があるのは当然です。「手数料が安いから使う」とはいかないでしょう。ただ、手数料を支払ってでも実施するだけのメリットが「投資」にあることもまた事実といえるでしょう。投資のメリットとは何なのか? 金融行政方針は、金融機関は今、投資の魅力を分かりやすく伝え、資産形成の手段として「つみたてNISA」についても利用を促すことが大事だと示しているようです。

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